35章

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 守りの塔は先日のラムダの襲撃によるほころびを修繕しながら、細々と日々を営んでいた。  そこでミウは赤ん坊の世話をしながら、守りの塔の住人としての業務をこなしている。いくら手のかかる赤ん坊がいても、姉にこの作業を頼むことはできなかった。姉は優しい人ではあるが、現実的な能力が欠落していて、自分の世話がようやく出来る程度である。だから両親は守り人としての仕事を全てミウに託した。  この儀式は王様さえご存知ないのよ。  同じくこの守りの塔で一生を終えた母は、自慢げにそういった。父も優しかった。  町では守りの塔は呪われてるとか、そこの住人は魔女だって噂されていたんだ。だから自分がその相手に選ばれた時は絶望したけど、ママは素晴らしい女性だよ。  一連のおかしな噂は、この塔に人を寄せ付けないためのカモフラージュなのかもしれないね。とても静かで良い環境だ。  父は、外からここに招き入れられた人物だったが、無類の読書好きとあって、塔での生活を根っから気に入っていた。  だからミウも、ブライトが不憫に思うほどここの暮らしを貧しいと思ったこともなければ、自分の境遇を悲しいとも思わない。  年頃になればきっと、王様が自分にふさわしい相手を神託で受け取って、ある日、夫となる人物が現れるだろうと思っていた。  父母が幸せな結婚生活を送っていたため、ミウもさほど心配をしていなかった。  王は自分とぴったりな人を選んでくれるはず。だから大丈夫。そう信じていたのだ。  ミウは鼻歌を歌う。カイがよくここで子守唄を歌っていて、それを覚えた。赤ん坊はこの歌でよく眠る。すごくよく眠る子供だった。それにあまり泣かない。  起きるといろんなものをじっと見つめている。ミウが話しかけると耳を澄ませているのがわかる。  まだ生まれて数カ月なのに、言葉を理解しているようだった。もしかしてもう何もかもわかっているのではないか。そんな気分にさせるところが、この子供にはあった。
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