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ミウは洗濯物を干して、空を見上げた。守りの塔は高い高い壁に囲まれていて、その塔の周囲を取り巻く森を見ることはできない。だが塔の内部は立派に丘もあれば林もあり、畑も川もある。
だからとくに閉塞感を感じはしなかった。
だが、リン王妃がこの塔を監視させているらしく、それをブライトから聞いて以降、外が気になる。
だが塔の内部には選ばれた者しか入れないため、安心していいんだと自分に言いきかせていた。
ミウは塔の中に入り、一つのドアを開けた。
このドアはミウにしか開けられない。カイではびくともしなかった。もっとも彼はこんな部屋には興味を持たないかもしれない。この部屋には何の面白いものもなかったし、素晴らしい景色もない。
ここは彼女の仕事部屋だった。いろんな形のボタンやレバーがあり、昔から伝わる手順で決まったボタンを押したり止めたりする作業が仕事なのだ。
これは祈りの儀式なのよ。
母はそう言った。子供の頃からそう言われてきたミウは素直にそれを信じた。世界を守るためにこの儀式があり、その祈りは内密で、人に見られると、魔法の力が消えてしまうのだと考えていた。
だから神さまはこんな風に他の人に見られないように塔をたて、高い塀をめぐらせて、決めた人にしか開けられない扉を作ったのだ。
ミウは、固く信じている。
一連の作業が終わるとその部屋から出、さらに通路の奥の部屋に入った。
「お姉さま?」
「ミウ」
今日は素早く返事が返ってきた。
ここは保管庫と呼ばれている。王国の歴史の始まりから全ての蔵書や記録文書がここには残されていた。王室の図書館より蔵書量は圧倒的に多い。それにこの部屋の凄いところは、いろんな動画が見られることだった。
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