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「ねえ、ブライト。この世界はまるでよくできた箱庭だ。どうして誰もおかしいと思わないんだ。ブライトの神剣、それだって謎だ。この剣は誰がどうやって作ったんだと思う?」
「それは……プサイ神から始祖が頂戴致した神器なんだから、神だろう。俺達軍では、武器の開発なんてしていない」
「それだよ!」
カイは得たりとばかりに叫んだ。
「僕たちは何も作りだしていない。何も進化しない。疑問ももたない。ただそこにあるものを当然として受け止めている。誰も疑問を持たないなんておかしいよ」
ブライトはカイの言う事こそ、理解しがたかった。もちろん、カイの言葉の意味はわかる。だが、その疑問を投げかけられたところで、掘り下げる理由がなかった。
カイは軽く失望したようにため息もらし、苦しげに呟やいた。
「いいんだ、思ってた。たぶん、僕だけが……」
ブライトはカイの発言の端々に不穏なものを感じ、訝しげに聞いた。
「カイ、やっぱり何か悩みでもあるのか」
カイは首を横に振った。この悩みぶかき王は、片目をつぶってやり過ごすという生き方ができない性分である。いったん抱いた疑問をなかったことはできない。だがこれ以上この話をブライトにぶつけても仕方ないと思い、話を切り換えた。
「ブライト。ずいぶん、ミウに親切にしてくれてありがとう。」
「え? ああ、だって壊したのは俺だからな。それにお前よりは多少なりとも自由もきくし」
「ミウが嬉しそうだと僕もほっとする」
ブライトは照れたように笑った。
「遠征の合間をぬって何回も、悪かった」
カイは重ねて礼を言った。そしてブライトの顔をしばし凝視した。
ブライトは言葉通りにそれを受け止め、カイがこのタイミングでこの地に立ち寄った偶然を疑いもしなかった。
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