1章

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 踊り子たちが舞台で華やかにドレスを翻す。赤や黄色、薄紅色のドレスが花のように広がって、観客から歓声が漏れる。  リンは上品に微笑んで、拍手を送った。  右大臣の来訪を避けるため、あえてリンは政務の予定を入れた。  政務と言っても王妃のする業務はあちこちに『お言葉』をかけることが大部分である。ここでは全く興味のない伝統舞踊の発表会に来賓として出席しているのだが、無関心なだけに雑念が次々に湧き上がってくる。  深い水の底から気泡がぷくぷくとはじけるように、頭の中で声がする。    いよいよ状況は切実なのですよ。  結婚から四年で御懐妊の兆候がただの一度もないなんて!  リンを常にイラつかせているのは、この話題だった。  右大臣は、つまりリンの実の父と母は、入れ替わり立ち代り城にやってきては妊娠の有無を尋ねる。結婚してから毎週の事だった。はじめはやんわりと切り出していた両親も時間の経過とともに目の色が変わってきた。  お医者様によく診察していただいたら如何か、リン王妃。  陛下とは睦まじくされているの?  そのたびに、リンはええ、ともまあ、とも歯切れの悪い言葉で濁す。  たしなみのある王妃が、寝室での出来事をあけすけに親に報告するなんてできるだろうか。  それよりも第一に、リンには答えられない理由があった。
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