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椅子から降ろされてもまだ彼女は指を加えて画面を見ている。まだテレビを消さないほうが良さそうだ。
母親の足元に毛束が落ちている。今回、二歳児のカットということで、お母さんに抱っこしてもらいながらめいちゃんの髪の毛を切った。紗優は、めいちゃんの髪の毛を大きい専用のほうきで払っていく。店長の視線を感じながら注意深く紗優はそれを行った。
お金を支払うと母親は頭を下げ、満足した顔で出て行った。めいちゃんのほうはまだまだ未練あり、といった感じで、店の外から名残惜しそうに見ている。――あの様子だと、帰ってからまた見るのだろう、あのアニメを。
「可愛い子やったねえ」
「ですねえ」隣に座っているお得意さんの髪をカットしながら店長が言う。紗優は、笑みを絶やさぬよう意識しながら床に落ちたままの髪の毛を片付け、タオルを専用のかごに入れる。
「……紗優ちゃんところの子どもも、あんくらいやなかったけえ?」
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