坂田紗優

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 思いのほか、主婦は紗優に食いついてくる。「ですねえ」と紗優は微笑みで応じた。「うちの子は女の子で、美和って言うんです。さっきのお子さん、うちの子と同級生ですね。……小学校は違うところかもしれんですけど」 「美和ちゃんていま幼稚園預けとるんけ」  保育園と幼稚園の区別がつかない人間は多い。どうやらこの女性も、そのようだ。  紗優は、「きらきら保育園に通わせておるんです」と答え、黙々とハサミを動かす店長に水を向けた。「店長のお孫さんも幼稚園に通っとるんですよ」この場合において。保育園と幼稚園の違いはさして重要ではない。
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