手のひらドラゴン

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 最近、N市内で、血なまぐさい事件が相次いでいる。市内の中心部にある大手門中学校の生徒たちも、毎日その話題を口にし、同時に、震え上がっていた。 「ねえ、聞いた?また変な事件起こったわよね?」  柔らかな日差しに包まれ、桜が舞い散る中学校の門前で、下校途中の太田冴子(おおた・さえこ)は、歩きながら同級生の吾妻龍児(あづま・りゅうじ)に聞いた。  龍児の髪はライトブラウンで、瞳は青みがかっている。一目で、西洋の血が流れていることが分かる。冴子は、中学2年生とは思えぬ長身で、一七〇センチあった。一五〇センチほどの龍児と並ぶと、親子のようである。  同じ中学に通う2人は、小学校からの幼馴染で、気心が知れていた。 「ああ、なんか、どっかの会社の偉い人が、会社の帰り道に、飛んできた獣に喉を噛み千切られて死んだってやつだろ?マジで怖いよなぁ」  龍児がそう言うと、冴子は、その小さな肩を震わせた。 「…あの人、私の叔父さんなんだ。お父さんの会社の子会社で社長してたのよ」
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