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学校の体育館のように天井が高く開放的な空間。規則正しく配置された沢山の本棚。いつも知らない男を家に連れ込む母親から邪魔者扱いされるシホリにとって、この図書館に来るのが日課だった。
今日は心なしか利用者はほとんどおらず、まるで閉館時間間際のような閑散とした雰囲気を漂わしていた。
いつもの窓際の席で本を広げ黙読していると、一人の男がシホリに近づく。
「やっ、シホリ君」
声に反応し顔を上げると、よれよれのビジネススーツに身を包んだ眼鏡の男が立っていた。
「五輝さん」
その男、五輝はシホリの隣に座ると、周りに誰もいないにも関わらず小声で語りかけた。
「いよいよだね。君の順番が決まったよ。188番。まあ早い方じゃないかな」
「そう、ですか」
シホリの浮かない横顔を見た五輝は、そっとシホリの肩に手を置いた。
「やはりまだ迷いがあるようだね。僕と違い君はまだ若い。辞退しても誰も責めやしないよ」
シホリは膝の上の手をギュッと握り締めた。
「……大丈夫です。五輝さんと出会ったあの日から覚悟はできています。少しでも皆さんのお役に立てるのなら、私……」
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