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延々と続く暗い森の先に、出口と思われる光が見えた。
「グ……グラド、ソノラはまだ遠いのか……ちょっと見てきてくれないか?」
「オッケー」
最後尾を歩いていたグラドが返事する。そして斧槍を背負い直すと、老人のようにとぼとぼと歩くジークとメトルルカをひょいと追い越した。
森を抜けると、そこは小高い丘の頂上だった。吹き抜ける爽やかな風が、グラドの深緑の髪を揺らした。
その風に乗って、かすかに音楽が聞こえてくる。
「ジーク、メト、丘を下ったところに町があったよ」
「本当か! ようやくこの森ともおさらばだぜ……!」
グラドの言葉に励まされた2人は、ふらつきながらもなんとか森を抜けた。
「ああ、あったー! ついに音楽の町ソノラに到着か!」
「うええ……ようやくお風呂に入れる……もう野宿は嫌だあ……」
数日前、故郷アイデアルを旅立った3人だったが、そう簡単に次の町まで行けるはずもなく、ずっと野宿生活をしていた。
神であるグラドや衛士としての訓練を積んできたジークと違い、メトルルカは町から出たことのない箱入り娘だ。野営も、井戸水以外の水を飲むことも、グラドが獲ってきた獣や魚をさばくことも、どれも最悪の初体験であった。
「おいおい、頼れる神官さんがなーに弱音吐いてんだよ」
「ジークだって『町に帰って果実と惰眠を貪りたいー』って言ってたくせに!」
キャンキャンとわめき合う2人だったが、腹の虫が同時に鳴ったことで口をつぐんだ。
「……まあ、あれだ。とりあえず町まで行こうぜ」
そして3人は衣服の乱れを整えてから、ゆっくりと丘をくだっていった。
****
ぼんやりと聞こえる程度だった音楽も、町へ近付くに連れて賑やかになってきた。
城壁の中へ踏み込むと、別世界と思うほどの華やかな光景が広がっていた。馬車や牛車が2台並んで走れるほどの広い道幅、町のいたるところで楽器を奏でる人々の姿に、ジークとメトルルカはポカンと口を開ける。田舎町のアイデアルとは大違いだった。
「すっげー……壁が全部白い石でできてるぜ。道も土じゃねえし……」
「うん、すごいね……服もカラフルで帽子からは羽根が……ちょっと目眩してきた」
食べ物の屋台が並ぶ広場まで来ると、食欲をそそる揚げ物などのニオイが鼻と胃袋を刺激した。蒸した肉や焼き魚、油でカラッと揚げたパン、どれもおいしそうだった。
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