星が輝く夜の女

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12月25日金曜日のクリスマス、僕は千夜さんと同伴していた。 個室の居酒屋に入っていつものように生ビールで乾杯し、お互いにクリスマスプレゼントの交換を行った。 料理を食べながら千夜さんが不思議なことを話しはじめた。 「悠宇さん、いつも同伴してくれてありがとう!  悠宇さんは私の命の恩人なんだよね!」 千夜さんの話に疑問を持った僕は、 「命の恩人って、僕何かしたっけ?」 と話すと千夜さんが慌てた様子で、 「いいえ、何でもないです!」 と言って話をそらした。 この日の千夜さんは、いつにも増して美しい女性に感じて、僕は千夜さんとずっと一緒にいることができたら幸せだと感じていた。 居酒屋で腹ごしらえをして店を出て、キャバクラに向かって2人で歩いていると、空には星がきれいに輝いていた。 交差点の信号が赤で、僕達が立ち止まって待っているときに、 「きれいな星だね!」 と僕が思わず口に出すと千夜さんが、 「そうですね!  悠宇さんと初めて星を見に公園に行った時のことを思い出しますね!」 と空を見上げて楽しそうに話してくれた。 信号が青になって横断歩道を渡り始めてまもなく、僕は突然後ろから強く突き飛ばされ横断歩道上で転倒した。 僕はいったい何が起きたのか理解できないまま起き上がって後ろを振り返ると、車が千夜さんを跳ねて急停車していた。 千夜さんが横たわっていて僕が慌てて近づこうとすると、千夜さんは突然まぶしい光で覆われて姿が見えなくなってしまった。 少しすると光が少しずつ薄れてきて、そこには新宿ゴールデン街近くの花園神社で見つけた白い猫が横たわっていた。 僕は、白い猫を抱き上げて、 「千夜さん…」 と必死に声をかけたが白い猫はぐったりとしたままで、そんな白い猫を見て僕は涙が溢れ出て止まらなかった。 周りに人が大勢集まってきて、この不思議な現象を見て驚きを隠せないようだった。 その後僕はどうしたのか良く覚えていないけれど、白い猫を抱きかかえて自宅に帰っていた。
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