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unexpected crush
比較的周りとうまくやっていけてるほうだと思っていた。
調子が狂ったのはある男と知り合って以降――自分から誰かの力になりたいと思ったのは初めてだった。なれずじまいだった苦い経験を無意識のうちに投影してかもしれない。
それから彼が――ある一人の少女に関心を持っていることに気づいた。
芽生えかけた感情を隠そうとするらしからぬ姿が微笑ましい。気づいたときに味わったものは、幼馴染みの弟に初恋を打ち明けられたときの心境に似ている。
キューピッドだなんてがらじゃないけど、――あのまんまーじゃあ二人は接近できない。見ててもどかしいったらありゃあしないしどーにかなんとかできれば。
結果、
ミイラ取りがミイラになった。
彼女の反応に一喜一憂し、彼と親しくなる姿に安堵を覚えると同時に、――段々面白くないなにかを感じるようになった。
幼馴染みが裏では全然違う顔を持つ彼に惹かれていくのを傍観するのとは違うなにかが。
その正体に気づくのは親友たる彼が行動に出てようやくして、だった。
「――桜井くん」
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