unexpected crush

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 誰だっけ。……近頃記憶力がめっぽう落ちてる。勉強のほうに集中さしてるから同級生ですら誰だっけと思えることすらしょっちゅうだ。  女の子なんてみんな似たり寄ったりで違いがまるきし分からない。  いま自分が「ああ」とかなんとか言った気がするけど――さぞ気の抜けた声だったろう。  笑顔の仮面をつける余裕も無くなってきている。  紗優に「あんた顔ヤバいよ」と言われるくらいだから――相当だ。 「帰り、寄ってく? ……うち……」  この子なんのこと言ってんだろ。――ああ。  思い出せた。思い出したよ。  思考の回転が老夫婦の餅つきみたいにのろい。「辞めとく。勉強してくし。――吉田さん。まだ興味あるの? そーゆーことに。僕はね、」  飽きちゃった。 「興味が持てないんだ、誰にもかれにも……」そーいや真昼間に僕に声をかけるなんて珍しいなあと彼女に関する記憶を掘り起こしつつ。「まだ『好き』なんだったら他に相手探してくれるかな」 「桜井くん、……変わったね」話すときに肩にかかる長い髪を掻き上げるのは癖なのかな。邪魔なら切ればいいのに。 『女の子』を意識した仕草が桜井和貴には目障りに映った。
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