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一歩、吉田知津子が桜井和貴に踏み込む。
「都倉さんのせい?」
――仮にそうだとしても、はいそうです、って誰が認めるんだろう。
桜井和貴は表情を動かさない。
ただし、これから述べる内容は吉田知津子に苛烈なものであった。
「いままでの自分の人生を見つめなおしてさ――まだ十七年しか生きてないけど、これでいいのかって思い直すタイミング、あるじゃん。いまがそのとき。受験生ほどじゃないけどやることが山ほどあってね、――ほかのなんにも考えられない。余裕が無い」
「誰のことも――」あたしも? と小声で彼女は付け足した。
「そうだよ」
「わ、かった。……いままで、ありがとう」
「僕のほうこそ」
「じゃあ、ね」
「うん。ばいばい」
これが別れってやつか。
気丈にも彼女は最後まで笑顔だった。――後ぐされを残さないように。女の子のそういうところってすごいと思う。真似できない。
頭を掻き桜井和貴は自らの別れを振り返る。
(でていけ、って追い出した僕とは――大違いだ)
経験を経、反省をし、人間はそれまでの体験を塗り替える新しい行動をすることで学習をする。
僕は、――なんにも学習してないや。
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