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主要な話を持ちかける人間が必ずするように長谷川祐は桜井和貴への距離を詰める。
「あなたはおそらく、蒔田くんと都倉さんが仲良しこよしだと思っているのでしょうが、……どうして登下校のあいだじゅう蒔田くんが都倉さんにつきっきりなのかを教えてあげましょうか。
――守るためですよ。噂から、彼女を」
「噂って、真咲さん、が……」
「皆目検討つかずのようですね」ため息を吐くとお腹の名札が波を打つ。「……彼が彼女に告白したのは知っていますよね。なにしろあなたはその場面を目撃したのですから。桜井くんをいいように利用した上に現在、蒔田くんをも弄ぶ悪女、というのが大方の皆さんの都倉さんへの見方です。……蒔田くんもなかなかのジレンマをお持ちですよね。近づけば噂され、かといって離れればその間じゅう彼女は冷たい目に一人で晒される……」
「正門にいんだよね、女子」
「ええ」
矢も盾もたまらず駆け出す桜井和貴を見送り、長谷川祐は満足げに笑みを浮かべた。
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