closed hatred inside

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 ひとは、どうしたらひとを憎めるのだろうか。  家でも学校でも『ひとを自分のことと思うように』と教育されているのに。  まったく知らないひとのことでも、自分のことのように痛ましいと感じる感受性を育て。  友達が傷つけられたら憤る。先輩からいじめられたら友達同士で頑張った。そんなことしない先輩になろうと心の糧にしてきた。  では自分の守るべき対象から除外されるのはどのようなときだろう。  答えはシンプルだ。  自分とは同じように考えられぬ人間――  自分の大切な何かを奪い去った人間のみ。  それが誰かの関心という、目に見えずまた簡単に取り返しの付かぬものであれば尚のこと。  吉田知津子は苛まれている。  ――彼は。  ごみ箱でも見るような目で見た。――一度、空き教室で桜井和貴を誘惑した。彼の邪魔さえ入らなければあのまま触って気持ちよくなれ気持ちよくさせられた。お昼休みの50分間もあれば、十二分だ。だが通りがかった彼が――いや明らかに桜井和貴を呼びに来た蒔田一臣が、なに食わぬ顔をして入ってきて――  自分のことを無視した。
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