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のみならず、吉田知津子の得意とする男子受けもいい甘ったれた声を出せば――
目だけで侮蔑した。
あんな目で男子に見られたことは一度足りともなかった。
吉田知津子だって、ひとりの女の子だ。好きなのは桜井和貴ただ一人だが、現在二人のファンクラブの会長を勤めあげる関係上、彼の動向も追っている。彼との直接的な接触は皆無だが、どんなタイプの男子だかを知っている。無愛想無関心――中学時代に付き合った柴村稜子とよりを戻したことからすれば取り立てて女性嫌いと言うわけではなさそうだが――彼の言動は一見すると女性嫌いそのものだった。
男子なら誰でも話しかけられれば声が上擦る宮沢紗優に対してさえ冷淡な態度を保つ。男子に対応する場面のほうがむしろフレンドリーに思える。
吉田知津子の興味関心のベクトルは蒔田一臣にも向かっている、年頃のアイドルに憧れるみたいに、それが――
目線の動きだけで踏みにじられた。
それでいて、――
思い返す度に吉田知津子は舌を噛みたくなる。
(なんで、都倉さんにはあんな優しいんだろ……)
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