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母のように、昔ながらの健気で耐え忍ぶ女であれば、譲る気にもなれた。
都倉真咲はいずれにも該当しない。
取り立てて容姿やスタイルが優れているわけでなく――努力なら吉田知津子のほうがもっとしている。みんなに褒められる長い黒髪のケアだって一日足りとも欠かしたことはない。唇だってガサガサにせずいつも色付きリップで潤わせている。それに比べて――
彼女は何の努力をしているのだろう。
労せず吉田知津子の欲しかったなにもかもを手に入れる。そのうえ、
(風邪で普通倒れる? ……考えられない。わざとなんじゃないの。蒔田くんの気を引くために……)
であれば『醜い』の一言だった。
自分に甘え他人への甘えを全面に押し出す精神が。
あの頼りなさ気な外見が、小さなからだが、それを利用する言動が。
吉田知津子がそれをすれば、同じように誰か助けてくれただろうか。
母は、違った。
からだが弱いのか風邪で欠席をする、――その場面を吉田知津子は目撃したことはないが――数度とはいえ蒔田一臣に抱きかかえられ運ばれていく都倉真咲の姿が姉に重なって見えた。
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