ease this impatience

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 抜いていくのがまた一人。長谷川祐の姿なんかスタート地点でとうに見失った。最初の団子状態を抜けるどころかいま三番手のグループ。そこら辺は把握している。向かい風に下り坂、――先々考えぬやつはここでぶっ飛ばしていくんだがあとで必ず減速する、先にやつらを立たせて強風を凌ぐのは走りに疎い人間でも知ってるセオリーだ。  焦ってはいけない、そのときを待つだけ。しかし問題は、 (スパートかける体力が残ってるかどうかだ)  ガソリンの枯渇した軽自動車だった。また、汗が顎から垂れる。拭う。汗の量が尋常じゃない。これ、  ――倒れる寸前。  まだ半分も完走していない。  混濁していく意識を頭を振る行動で押し留める。  正確な自分の立ち位置の把握、コンディションの把握。――管理がもともとなっちゃいなかったから厳しいものがある。  毎日してた筋トレもここんとこサボりっぱ。ごはんなんか食べてない、し。  負ければ、このあとグラウンド十周したうえにあの子たち全員とデート、だっけ? 身から出た錆ってやつだ口は災いのもと。――それだけは勘弁したい。
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