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頭髪が残っていないのはあのひとの誇りだったと思う。
残らず燃やし続けた生存への執念。
にも関わらず、
簡単に、人は、死ねる。
どうせ死ぬだけだったらそれまでの間になにかをすることにどんな意味がある? 僕はなんだか、……生きる意味もろとも見いだせないでいる。
見いだせなくとも酷薄にやってくる、
人間はそれを待つだけだ。
デッドエンドを。
「俺は、……分かっていた。分かっていてやったんだ。おまえの気持ちを……」
現実に見るマキの漆黒の瞳はうっすら膜を張っている。
「責められるべきなのは、本当は、俺、なんだ……おまえをこんなにしたのは、俺の、責任だ」
「は。責任?」僕は鼻で笑った。自分から出る行動がおそろしく生意気なものと分かる、けど止める意志は無かった。「見くびってんじゃねえよ」
マキは顔を起こした。
「そーやって自分を責めて酔いしれんのも結構だけど、僕のことを信じれてない証拠だよ。僕は、……僕の行動に責任を持つことのできる一人の人間だ。マキとおんなじでね。……きみが望むことを僕がしないのは、きみと僕が違う人間だからであって、悩むことなんか一つも、無いんだ」
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