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励ますんじゃない、
自分のためだった。
ひとが死ぬのを見るのはもうたくさんだ。
心が死ぬのを感じるのはもうたくさんだ。
愛を失ったひとを見るのももう充分だった。
誰かが涙するのを見るのももう充分だった。
僕は、――壊れている。
一瞬であれ、恋心めいたもんを抱いた相手がこんなにもからだを震わせ、罪の重さを感じ、自分の行動の起こした結果に苛まれている。
それをまどろっこしい言い方で突き放す。
この残酷さは彼には伝わっているだろうか?
「もしそれでも解決しないんだったら、――簡単だよ」
無かったことにするんだ。
「そうして気がついたときには消え去っている……怪我とおんなじだね。かさぶたが剥がれた頃には癒えている。もしね、マキが自分のした行為で後悔に悩んでいたとしてもそれはいっときのもので、十年経てば忘れられる。そんなもんでいい」
「出来るのかよ」
贖罪を求めていたかに見えたマキが、どうしてだか怒っている。
「おまえは、全てを忘れ、無かったことに出来るって言うのかよ」
「いつもそうしてきた」
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