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僕が制服のこのブレザーに身を通すのも最後だ。春休みに学校に顔を出す連中はほとんどが私服だ。気に入ってるジーパンにジージャンとかラフなやつをこぞって着る。一様にみな晴れがましい顔をして、国立に合格したやつなんかは特に、長く続いた受験勉強という冬の時代から解き放たれる喜ばしさをここぞと、後輩や先生たちに見せつける。
金髪になんかしちゃったりしてさ。
校則に拘束された領域を抜け出た瞬間、みなが同じ流行に染まるのが僕からすれば可笑しくもあった。
制服とは、従順の表れだ。
卒業後の僕らは不思議と、制服を着るのが個性となる。
「――和貴か」
ドアノブを離し、僕はいつもするように肩をすくめた。見えてないだろうけれど――いや。背中に第三の目でもついてないといろいろと納得が行かない。
あいつの言動には。
ゆっくりと閉まる扉が、大袈裟な音を立てて空間を閉鎖していく。
先客は彼のみ。
屋上の用途とは、退屈でたまんない授業と授業の合間を密かに楽しむところにある。休み中など好き好んで来るやつは居ない。
『明日、十二時に屋上に、来い』
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