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「言わせるなよ。……おまえ、自分で気づいてねえのか。好きで好きで仕方ないと顔にでかでかと書いてある」
「自分の顔を自分で見ることはできないからね、鏡でも無い限り。マジックペンでも持ってる?」
「他人は自分の心を映す鏡だ。……生憎だが持ち合わせは無い」
「なんかご機嫌ななめだね。帰るよ」
「俺が苛々して見えるのだとしたらそれはおまえが本音を吐かねえことに対してだ。どうして、認めない」
ちょうど、振り返ったタイミングでだった。
ノーガードな僕に対し、文字通りの物理的で強烈な一撃が存分に振るわれていた。
――いつかの僕も。
同じ手を使ったのだった。柴村稜子の話を振った。そしてマキに声を出させることに成功した。
痛みは、感じる。
だが大部分が麻痺している。
顎でもかち割られたかの激しい痛みが残るも、
どうでもいいやって、思えてくる。
いったいどうしたんだろうな、僕は。
こんな僕を心配してるってのに、マキは。
「くだらねえ気遣いなんかすんじゃねえっ!」
驚いたことに。
自分が、殴られたとしても。
道端で、轢かれた猫が横たわっていても。
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