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今度は携帯だ。後ろポケットに敷いた振動がお尻に伝わる。突然の呼び出しもあるので常にからだに触れさせておく必要がある。
まさか、……な。
トラブルでないことを祈りつつ取り出せばピンクに点滅していた。
安堵の息を吐く。
彼女からのメールだ。
しかし、と僕は首を捻る。
彼女は連絡する時間帯に気を遣う。僕の仕事の時間が不規則なので、昼夜を除けば滅多に電話もメールもしない……
『件名:おはよう
起こしちゃったらごめんね
今朝ね、和貴の夢を見たの
天使みたいな寝顔ですやすや寝ててね
すごく可愛かったの
それだけ
変なメールでごめんね
今日も、いい一日をね』
二度も謝り、『ね』を使いたがる。
僕には甘えたがりの彼女だ。
それと。
たくさん打たれた改行に気づかないわけがない。
スクロールをし、
隠された四文字を見て、僕は微笑んだ。
改行を恥ずかしげに打ちまくる彼女を想像する。
――ねえ。なんのつもりでこれ打ったの。ほら。恥ずかしがらないで、ちゃんと、僕の目を見て、言ってごらん?
これから、伝えに行くんだ。
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