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彼女の期待する以上にいい一日が、待っていることを。
大切なものはこの手に入れ、
そして守りぬきたい。
神が平等に分配する幸せにあやかるのではなく。
「えーお待たせしました、空港行き、六時十分発のバスが、出発します……途中高速に乗りますので安全のためシートベルトをお閉めください……」バスのエンジンがかかり、座席も振動する。
ぼそぼそとした抑揚のないアナウンスだったが、次のは僕向けにだった。
「……安全運転で行きますんで」
僕は頭を下げた。「お願いします」笑い混じりの声になった。
実を言うと乗り物に乗る度に寒気がする。特にバスと車の類は必ず。電車飛行機新幹線なら平気なんだが。
でもこの運転手なら、必ず、無事に運んでくれることを確信した。
この想いとともに。
彼女の元へと。
いまだ温かみを残す。
愛する彼女の四文字をこの胸に当てて僕は、安心して、身を委ねることとした。
『大好き』
――『ただ左の手のひらに・最終章』END――
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