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「美輪さん、全然見つかりませんね」
私たちは疲れて最初に案内された畳のある和室で座っていた。
「ええ、こんなに探しても無いとなると、やっぱり家にはないのかしら」
「どうでしょう、まだ何とも言えませんね」
「……」
少しの沈黙があり、突然扉が開いた。
「どうぞ、お、お茶です」
娘さんがお茶を持って入ってきた。よく気が利くいい子だ。
小さな体で大きなお盆にお茶を乗せてもって来た。
そういえばさっき、美輪さんのご主人は亡くなる少し前に娘さんに写真を渡したって聞いたな。
何か聞いてたりしてないだろうか。
「ねえお嬢ちゃん……」
待て待て、娘さんに最近亡くなったお父さんの話を振っていいものなのかな?
いやだめだろう、さすがに浅慮が過ぎる気がする。
でも何かわかるかもしれないし。
「あの、美輪さん。娘さんにどうしてあの写真をもらったかとか、もらった時何か言ってなかったとかって聞きました?」
本人には直接聞かないで美輪さんを介して確認をとる!
最初からこうしとけばよかった。
ああ、話を途中でやめちゃったから娘さんが気になってずっとこっち見てる。
「いえ聞いてないわ、でも確かに、聞いたほうがいいわよね」
「そう、ですね」
「ねえ麗香、お父さんからあの写真をもらった時何か言われた?」
娘さんの名前、麗香ちゃんっていうのか。
美輪さんから質問を受けた麗香ちゃんはお父さんの写真を一瞥してからこっちを向いて答えた。
「ん? うん。お父さんねあの硬い写真を大事にしてくれって言ってた。あとね、安心? して生活しろって」
なるほど。お母さんとはちゃんと話せるんだ。
それもそうか。
知りたいことも知れた。
「そう、ごめんなさいね文子さん。何も分からなかったわ」
美輪さんは少しがっかりした様子を見せる。
「そんなことないですよ美輪さん。ちゃんと分かりました」
私の口角が少し上がる。
「え?」
美輪さんは驚いて目を丸くしている。
麗香ちゃんは話に興味が無くなったのか体ごと窓に向けて外を見ている。
「文子さん、どういうことか説明してもらってもいいかしら?」
美輪さんは恐る恐るといった感じで質問してきた。
「ええ、じゃあ説明しながら――メモを見つけてしまいましょう」
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