梅雨明けのメモ

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 風が少し暖かくなり、湿気を纏った空気が重たく感じるようになった。梅雨入りしてからずっとこんな天気だ。    何日か前にお客さん――たしか名簿には美輪さんって書いてあったかな――が持ち込んできた古本を査定しなければならないので、買い物をして早く帰らなくては。  げた箱から靴を出して上履きをしまい、学校指定の革靴を履いて門を出る。今日はずっと雨が降ったり止んだりな不安定な天気が続いている。  どうやら午前中、気が付かないうちに一雨あったらしくそこらに水たまりが出来ている。  水たまりを踏まないように歩いていると目の前の十字路を左から右に私の様な庶民には縁がないであろう高そうな車が、かなりの速度で走って行った。その黒い高級車を少しだけ目で追い、十字路をまっすぐ進んで先にある商店街へ晩御飯の買い物へと向かった。
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