バニラの大地は硬い

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 翌朝、空が白け始めて東京の摩天楼も流石に眠りに就く中、私は東京駅へと向かった。 夏休みとは言え流石に平日早朝の東京駅は空いている。新幹線のチケットもあっさり購入することが出来た。  発車五分前、富士山の見える窓際の席を確保した私は出発を待つ。流石に早朝であるせいか乗客はまばらであった。前の座席テーブルを下ろすと同時に大欠伸をした。すると、それと同時に車内アナウンスが入る。 〈ご案内いたします。この新幹線は、博多行きです――(後略)〉 ああ、始発駅発車後のアナウンスか。そして発車時間、この後はモモエちゃんの曲が流れるのよね。あれ? 農業アイドルグループの方だったかな?  新幹線に乗る度にどっちが流れるか予想して当たるとちょっとうれしい。 〈……〉 あれ? この後のアナウンスもない。そうか、東京駅から品川駅までは十分で到着だから、短すぎて発車後のアナウンスは流れないのか。いつも名古屋からしか新幹線に乗らないから知らなかったな。以前に何度か東京に出張した時も時間に余裕があったから帰りは高速バスか東京の上司の車だったしな……  そうか、始発の新幹線に乗るのはこれが生まれて初めてになるのか。 そして、ものの数分もしない内にモモエちゃんの曲が流れる。 〈まもなく、品川です。山手線、(他路線は中略)はお乗り換えです。今日も、新幹線をご利用下さいまして、ありがとうございました。品川を出ますと、次は新横浜に停まります〉 本当に短いな…… 東京から品川までは。まさかこんな早朝に特急料金を使ってまで東京から品川に行く人間はいるはずがないだろう。すると、前の座席に座っていた初老の老人がスッと立ち上がった。急いでいるのか、富裕層(セレブリティ)なのか、はたまた両方を兼ね備えているのか…… 不思議なものである。 新幹線が品川を発車した。まもなくにモモエちゃんの曲が流れる。 〈今日も、新幹線をご利用いただき、ありがとうございます。(後略)次の停車駅は新横浜です〉 確か品川から新横浜もすぐに着くんだったな。新横浜さえ出てしまえば後は名古屋まではノンストップだ。昨日は仮眠室まで眠れなかった分を取り戻すために少しでも眠らないと…… そんなことを考えていると、新幹線パーサーが私の座る車両に入ってきた。私の席より後方に座っていた若い男が新幹線パーサーに声をかける。
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