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第1話 友達と待ち合わせ
東京都渋谷駅──その前に建てられたハチ公像。
そんな有名な石像の前で、塩辛鯖江は待ち合わせをしている友人が姿を現すのを待っていた。
頻りに電灯に設置された時計に目をやり、時刻を確認している。相当に彼女はそわそわしていた。
なんせ、待ち合わせの時刻を過ぎているのに友人の早苗葉菜が一向に姿を現さないのだ。
遅れているというのに、遅刻の連絡すら来てはいない。なにをやっているのだと、ついついムッとしてしまう。
ふと、鯖江は携帯電話に目を向けた。
携帯の画面に通知が来ており差出人の名前から、それが待ち合わせ相手の葉菜であることが分かった。
『ごめん! 少し遅れそう!』
遅刻の連絡にしても、待ち合わせ時刻はとっくに過ぎている。もう少し早く連絡を寄越せないものかと、鯖江は溜め息を吐いたものだ。
鯖江とて、待ち合わせに遅れないためにメイクを途中で切り上げてきたのだ。そうと分かれば、もう少し余裕をもっておめかしができたものを──。
『もう少しだから、そこに居てね』
さらに続けてメッセージが来ていた──。もう少しって、どれくらいなのだ。
葉菜が姿を現す気配はまるでない。
鯖江は空いているハチ公像の台座に寄り掛かりながら友人の到着を待ち侘びた。
──絶対遅れずに、この時間に来てね!
そう念を押してきたのは葉菜の方である。──それなのに、言い出しっぺが堂々と遅刻するとは、どういう了見なのだろうか──。
もしも姿を現したら、文句の一つでも言ってやろう。──鯖江は心の中で思うのだった。
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