第9章 悪い魔女の正体

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 その日はずっと上の空で仕事をした。  上の空でも一応滞りなく仕事が片付いていくぐらいには成長したんだな…ははっ、ちっとも嬉しくねーぞ。  もしもあの日の電話に俺が出ていれば、あきらは何を語ったんだろうか。  なんで一度ぐらい会いに行かなかったんだ。  忙しかったからだなんて理由にならない。それならせめて電話だけでもよかったのに。  遠藤にそそのかされて数字の違う伝票を書いて、それをいまだにかばっているんだとしても、「そんなヤツやめて俺にしとけ」って言えたらかっこよかたのに、なんだよ、自分ひとりで傷ついた気分になってただなんて…ホント馬鹿だな、俺って。  そんなことをずっとぐるぐる考え続けて、昼休憩中に北川にメールを送った。 『あきら今どこにいるんだ?』  さっき森田が、北川はあきらの退職のことを知っていたのにってチラっと漏らしたことを思い出したからだ。  返信は夜中だった。  まさかとは思うが、この時間まで仕事していたんだろうか。 『いまさら何言ってんの 馬鹿かよ』 『そうだよ、馬鹿なんだ。だから教えて』 『金曜日の夜予定あけてちょっと付き合え。悪い魔女に会いに行くぞ。上手くいったらあきらちゃんの居場所を教えてやる』  悪い魔女だとぉぉ!?  お守り代わりに、あきら専用武器の脚立を持っていこうかと一瞬本気で考えた。  そして迎えた決戦の!?金曜日。  俺はよくわからないまま約束の19時に待ち合わせ場所に来ていた。  そこに現れたのは、北川と森田だった。  なんだこいつら、いつの間にか仲直りしたのか?悪い魔女退治で意気投合か!? 「時任、今日は俺らに話合わせて、ただ頷いておけよ。余計な口出しは一切ナシ。おじゃんになったら永遠にあきらちゃんには会えないと思え」  「お、おう」  俺は唾をごくりと飲みこんだ。  俺たちより少し遅れてそこに現れたのは、女子3人組だった。  ……え?これは、いわゆる合コンでは??  隣の北川を見ると、ついさっき「永遠にあきらちゃんには会えないと思え」と言い放ったときのコワイ顔とは大違いのキラキラ爽やか笑顔で「こんばんは。来てくれてありがとう」とか言ってやがる。  腹黒王子様かよ。  で?悪い魔女は誰なんだ?と、その女子3人の顔をよく見た俺は思わず「げっ」と言いそうになるのを必死にこらえた。  右端に立っている子が、俺を「島流し」にしたあの子だったからだ。
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