貯金箱2

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「貯金箱、本当にお父様が盗んだと 思われてますか。」 「正直父がそんなことをするとは、 到底思えません。 お金に困っている訳でもなく、 私達のことを応援してくれてました。」 彼を両親に合わせた時、 父は彼の前では格好つけていたけれど、 母からはすごく喜んでいたと聞いている。 でも父の威厳を保つために、 彼にそのことは伝えていなかった。 「でも監視カメラの映像には、 確かに父が写っていました。」 「その映像が嘘だとしたら。」 「嘘ってどういうことですか。」 「貯金箱には監視カメラなんて 初めからついていなくて、 あの映像は別に撮られたってことですよ。」 「仮にそうだとしても、 何故実家の父の映像なんて 持っているんですか。」 「計画的犯行だからですよ。 お父様を犯人に仕立て上げる為に 準備されていた。 この展開を予想して、 予めカメラを仕掛けておいたんです。」 「意味が分かりません。 誰がそんなことをするのですか。」 「薄々勘付いているでしょう。 彼がやったんですよ。」 送ってもらった映像を改めて確認した。 ラベンダーを生けた花瓶の隣にある 置き時計の時刻は17時を指しており、 その時間は確実に職場だった。 「湊は過去にも何度か交際相手から お金を騙し取っているんだよね。」 「でも、付き合っている間は お金にだらしない面はなくて、 家賃もちゃんと割り勘してたし、 奢ってくれることもあったし。」 「そう、相手が信用しきった後に 裏切るから騙される。 あいつはそういう奴なんだよ。」 私はこの人の言っていることを 鵜呑みにしていいのか分からない。 ただ聞けば聞くほど、 辻褄が合っているような気がしてしまう。
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