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私は自分のことが情けなかった。
貯金箱1つで取り乱してしまったこと。
湊を疑ってしまったこと。
父のことを知らなかったこと。
だから湊とは別れることを決めた。
彼には何も非はないけれど、
自分のことが許せなくて
けじめをつけたかった。
湊の家を出たあとは、
会社から近くて
日当たりの良い部屋を選んだ。
夏を目前とした日差しは、
眩しいくらいに部屋全体を明るく照らし、
洗濯物の乾きも良い。
そんなお気に入りの日差しも、
引っ越して2週間が経つと
鬱陶しく思えてきていた。
うだるような暑さに耐えきれない。
昨年の夏はそんなこと思わなかったのに、
と彼の家を多少恋しく感じる。
ないものねだりとは
こういうことなのだろう。
冷凍庫の扉を開けると、
ひんやりとした冷気が皮膚を擦り、
たまらなく気持ちいい。
棒状のアイスを1つ取り出し、
くわえながら定位置に戻って
再び携帯をいじる。
1人での休日の過ごし方を
すっかり忘れてしまって、
無意味な時間ばかりを重ねてしまう。
アイスを支える木の棒が頭を出した頃、
突然手元の電話が鳴った。
知らない番号だったが、
通話ボタンに触れた。
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