貯金箱2

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電話の相手は男性で、 中嶋と名乗った。 湊の学生時代からの友人だと言う。 湊との出会いは 社会人になってからだったし、 友人の話はたまに聞いていたが、 名前までは知らなかった。 だから、突然彼の友人と言われても あまり信用出来なかった。 私の番号を知っているのも不思議だったし、 湊とは別れてから連絡を取っていなかった。 いまさら友人を通じてコンタクトを 取ってくるのはおかしい。 何かの詐欺かと疑ったが、 中嶋を名乗る男は決定的な発言をした。 「今日お電話したのは、貯金箱の件で お伝えしたいことがあって。」 思い当たる節しかないワードだったが、 すぐに次の不安が浮かんだ。 やはり彼は貯金箱が父によって 盗まれたことに腹を立てていて、 私にお金を要求してくるのではないか、と。 でも自分から連絡をするのは気まずく、 友人を通じて要求しようと しているのではないか、と。 もしかすると、 中嶋という男の落ち着いた口調からして、 弁護士なのかもしれない。 「彼に頼まれたのですか。」 「いえ、彼には内緒ですよ。 今から麻衣さんに彼の秘密を 打ち明けようとしているのですから。 いうならば、密告者です。」 「え、秘密って。」 意味深な言葉に鼓動が早まる。 忘れかけていた手元のアイスが溶けて ぽたりぽたりと垂れはじめ、 急いでティッシュに手を伸ばす。
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