貯金箱3

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******************** 麻衣が家を出て行ったあと、 抜け殻のような家がもっと嫌いになった。 綺麗好きな彼女のおかげで 保たれていた清潔感は一瞬で崩れ、 出しそびれたゴミ袋が狭い部屋を 余計に狭くしている。 念願の挽き立てコーヒーも 散らかった部屋を前にしては なんだか味気なく感じる。 退屈な部屋から逃げるように 休日は理由もなく 外出することが多くなった。 何気なく通りかかった 駅前の花屋の一角には、 肩を寄せ合うように 淡い紫色のラベンダーが 大人しく佇んでいた。 それとは対照的に、 夏の風物詩ともいえる向日葵が 看板娘を気取って店の入口を 華やかに飾っている。 僕は店の戦略とは裏腹に ラベンダーに惹きつけられる形で 花屋へと歩みを進めた。 今の僕が求めているものは、 落ち着きや安らぎなのだろう。 「あの、すみません。」 入口を塞ぐようにして 向日葵を見つめる女性に声をかけた。 「あら、ごめんなさいね。」 声に反応して振り向いた女性は、 麻衣の母親だった。
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