貯金箱4

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1週間後の夜、 僕は彼女に電話をした。 約1ヶ月ぶりの電話は緊張したが、 ラベンダーで副交感神経を刺激して リラックス状態を作りあげた。 案の定、3年間築き上げたはずの 僕への信頼はなくなっていたが、 電話に応じてくれただけありがたい。 どう思われても良かった。 僕は真実を伝えたかった。 「ふたりで貯金を始めた頃、 僕は中嶋に貯金箱の話をしていたんだ。 最近観た面白い映画の話を するくらいのノリで。 そしたら、物騒だからって 監視カメラをつけるように 勧められたんだ。 彼はそういうのに詳しくて、 余ってるカメラがあるっていうから 取り付けをお願いしたんだ。」 「え、普通監視カメラなんて 持ってないよね。」 「あ、彼は理工学部で 機械を学んでたからね。 変な趣味で持ってた訳じゃないよ。 それで今回の一件があって、 僕は監視カメラの映像が 観たいと伝えたんだ。」 「それがあの映像ってことでしょ。 でもあれは偽物だよ。」 彼女が偽物だと気付いていたのは驚いた。 「ラベンダーの話、聞いてたのか。」 「聞かずとも分かるよ、 毎年ラベンダーだもん。」 「そうじゃなくて、 あの映像はラベンダーだったけど、 今年は向日葵なんだよ。 こないだお母さんに会って聞いたんだ。」 「え、そうなの。 私は時計の時刻が違ったから 気付いたんだけど。」 そんな細部まで見ていたのか。 女性の観察能力の高さには いつも驚かされる。 「僕はてっきり君のお父さんから 好かれていないと思い込んでいたけれど、 本当は違ったんだな。」 「黙っててごめん。 お父さんの迫真の演技も それに怯えてるのを見るのも面白くて。」 「おかげで嘘の映像に騙されたよ。 今になって、君のお父さんは 犯人じゃなかったって気付いたんだ。」
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