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何かがおかしい
父兄参加型、授業参観型の朝礼なんて「普通は」ないだろう。
それも陽が沈もうとしている夕方の屋上で、高校生にもなって。
山が迫る校舎の頂上からは、今は燃えているような輝きを放つ海も見える。
崩れ落ちそうな鉄塔と、それに乗っかる時代錯誤なパラボラアンテナ。
夕日を反射して太陽の塔にも見えるそれは、本物同様になんとも言えない不気味さを放っている。
その下で並ばされている生徒たちは、全員無表情だ。整列させている教師すら能面でも被っているかのように瞬きひとつしない。
おかしいと気づいたのは、とある生徒の両親だけだった。職業はタレント。芸能人として顔はよく知られている。
大抵の行動が許される彼女は、黒地に白ラインの入ったセーラー服に赤いネクタイという制服をきっちりと着込んだ、陶磁器のような肌をした美少女の腕を掴む。
「ねえ、あなた…」
少女は振り返る。そして無表情が並ぶ中で、ひとりだけニコリを笑みを浮かべる。その瞳はあまりにも暗く、深い闇を宿していた。
そうして舞台は変わる。
狂気に満ちた兄妹の物語へと変わる。
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