あなたとわたし

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まず生まれて覚えたことは足を伸ばすことだった そして背を伸ばすことも覚えた 明るい楽しさを知り 暗い寂しさを知り その辺りから言葉を覚えることにした らしからず それは多くの時間を必要としたのである 1つの決まった位置から動くことなく 何度も周りを飛び交う言葉に聞き耳を立てた ようやく理解したころに 声を発しようとした 動いたときに音はでるが いくら努力をしても 体から言葉というものが ちっとも出ることはなかった 会話がしたかった なのにどんどん大きくなるだけで どうしても出来なかった 愛おしかった 優しかった ザラついた肌をさわる温かい手に いつも感謝している だから背中を貸したり胸を貸したりする あなた達を守る 抱きしめてあげることはできないが 笑顔はいつだって用意しているよ 声を出せる大人が言う 「あと5分でおうちに帰るよ」 正確ではない決まり文句の5分に 周りにいた子供たちの動きが一瞬止まる そして その大人の方に行ってしまった あと5分が過ぎたころに日が暮れてゆくだろう 1人で立ち続ける寂しい時間 そして体を休める時間がやってくる ほぼ毎日訪れるあと5分は あんなに学んだ言葉もでてこない また明日も陽だまりのような1日を祈る 仲良く遊びましょう 大きな栗の木の下で
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