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第I章 Story of Genesis
親愛なるマキナへ
今、君が有るビジョンと、私が有るビジョンが異なる可能性もあるが、君との約束なので、未来にある出来事をここに記します。
また会える日が来ることを願っています。
A.D.2064年、量子コンピューター、ニューラルネットワークの技術普及に伴い、急速な科学進歩を遂げていた。特に人工知能分野ではこのふたつの技術の融合により、人間の脳活動をある程度エミュレートできるまでの発展を遂げていた。
「つむぎさん?」
「んーん?」
「つむぎさん、起きて。もう朝ですよ」
「……」
「つ・む・ぎ・さん?」
「あぁ、おはよう」
「おはようございます、朝食の時間だけど、和食と洋食どっちがいい?」
マキナはソファ越しにそう問いかけてきた。
「焼きたてパンがいいな、しかし、ここだと朝なのか、夜なのか、時間の感覚がわからなくなるから困る。何年経っても、慣れないな……」
「パンなら、バターがいいですか?」
「いつものバターで。ありがとう」
「どういたしまして」
ニッコリと笑いながら、京都風の軽い会釈をして、マキナはドアを出た。品のある振る舞いだ。
ここは宇宙エレベーター上の中継ステーションにある住居ユニットの一画。窓から見える景色は、地球の太平洋と天の川。私の誕生年は1964年、よもや百寿をここで迎えるとは、夢にも想像もしていなかった。
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