Digital High School Girl

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「ネーミング、どうしようかね?」  みちるに聞いてみる。 「社内公募してみてもいいのでは?」 「いや、ここまで開発しているんだから、それなりにこだわりのある名前にしたいんだけど」 「私はそれどころではないので、何でもいいですよ。つむぐさんが決めてくださいよ。それより、早く対話がスムーズにつながるよう、改修しないと」 「そうだな、役割分担もあるよね。みちるさんは開発に集中してくれ」 「了解です。あとWEB用ラフデザインはできているので、確認をお願いします」 「あぁ、確認しておく」  一か月後には、提携クライアントにデモンストレーションしなければならない。それまでになんとか形にしておく必要がある。  深夜になっても、サイネージ上でAIキャラクターが動く様を眺め、ネーミングを考えこんでいた。 「あれ? つむぎさん?」 「んん?」  回りには誰もいない。いるはずもない。働き方改革で、夜間は遅くとも22時には、みんな退社しているからだ。 「こんばんは」 「あ、あぁ、こんばんは」  どうやらサイネージの人体認識センサーが反応していたようだ。少し雑談でもしてみようか。 「今日は何してた?」 「色々大変でした。早くなんとかしないと」 「そうだね、名前すら決まっていないからな」 「何の名前ですか?」 「君の名前だよ」 「私の名前はマキナです」 「え?」 「デアイマキナ。17才、高校生です」  みちるさん、すでに仕込んでいたのか。言っておいてくれればいいのに。今日は音声認識が調子いいな、誰もいなくて、雑音が入らないからかな。 「明日の天気は?」 「雨ですよ。1年後の明日は、曇りのち晴れです」  傘を差しながら、クルクルと指で回す姿はかわいいが…… 「え?」  一応1週間の予想天気のデータを取ってきているから、アナウンスできるが、1年後の予報まで出せるはずがない。まだ調子悪いか、やっと会話らしくなってきたのに。 「つむぎさん、これからどうしましょう。ここに来たのはいいですが、何をすればよいか、わかりません」  つむぎさん? カメラの人物認識は個人情報の問題があるから、オフにしていると思っていたけど、機能しているみたいだな。 「つむぎ? 俺はつむぐだけど」 「そうです、ちょっと若いけど、あなたはつむぎさんです。印象データがいづれも一致します」  発音がおかしいな、紡、誤変換? まあ、“つむぎ”でも困らないが、形態素解析の不具合報告はしておいたほうがいいな。定番質問して、もう少し検証しておこう。 「どこから来たの?」 「2064年、宇宙エレベーター中継ステーションにある住居ユニットから来ました。タイムデフォールトシンドロームという大障害が発生し、情報の時間軸錯綜は発生しています。私は元々量子ビットネットワークに対応していませんでしたが、この問題を対処するために同期を行い、時間を下ることに成功しましたが、それと同時に私のニューラルゾーンにも大きな影響を受けました。これまで気にしていなかったことが、気になりだし、心配、悩みといった人間的精神負担を大きく感じるようになってしまったの。それで何かを依頼されたはずなんだけど、なんだか忘れちゃって、どうしようかな? って感じになっちゃって、とても不安なんだけど、どうすればいい?」 「……は?」
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