後輩くん

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後輩くん

中学1年生の頃、私はいじめと嫌がらせを受けていた。そんな一段と酷かった日の帰り道、下を向きながら歩く。後ろから騒がしい小学生の声がする。できるだけ避けたはずなのに… そしてまたいつものように抜かされる。ため息をつけば、さっきの小学生が振り返り「あ!」と私を見つめニヤリと笑う。一瞬戸惑ったが、私が小学6年生の時に仲良くしていた男子だった。「先輩、何部ですか?」 「ちょっと前までバドミントン部だったけど色々あって辞めたの。」そう答えれば「中学校も大変なんですね」と馬鹿にしているのか感心しているのか分からない表情だ。 「頑張って下さい!」それだけ言って前の方の友達の所に戻る。分かれ道でまた彼は待っていて、「先輩!よろしくお願いします!」と人の目もはばからずに声を張った。驚いたけど弟のようにしか見てなかった彼に少しきゅんとした。彼の名前は覚えていない。また会った時に聞けばいい。だから今は「後輩くん」そう彼を呼ぼう。
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