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これは、ある晩餐会でのこと……。 エドキエルとユフィネは連れだって出席したが、彼はユフィネの手を取らず一人で颯爽と歩いていた。 その後ろをユフィネが俯いて追いかける。 そして、エドキエルは国一番美しいと言われる未婚の令嬢とダンスを踊り、ユフィネは壁の花だ。 いや、花ならまだしも雑草だと言う声も聞こえるほど、彼女にとっては苦痛の時間だったろう。 それでも、エドキエルが令嬢を取っ替え引っ替えダンスをするのをじっと見つめ、身動ぎもせず待つ姿は、ある一部の人には献身的に映ったのだ。 「ラブグッド公爵夫人、どうか私と1曲、踊っては頂けませんか?」 そう彼女に声をかけたのは、辺境に住むバロック侯爵。 妻がある身で、どういうことだ!と、エドキエルの態度を心の内で罵っている。 彼はこういった仕打ちが許せない性質だった。 「まぁ……バロック侯爵、私などで宜しいのですか?……あの、あなたの評判が下がったりはしませんか?」 なんと奥ゆかしいご婦人だろう!と、侯爵は思った。 周りにいた、他の紳士達も、その慎ましやかなユフィネの言葉に驚いた。
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