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「そんなことありません!私はあなたのように謙虚な女性に出会ったことはない!本当にラブグッド公を羨ましく思いますよ」
侯爵は微笑んでユフィネに手を差し出した。
そして、その手をユフィネが取ろうとした時。
「何をしている?」
「え、あの………」
声をかけたのはエドキエル。
彼は、腕を組み、せせら嗤うように2人の背後に立つ。
そんな彼を見てユフィネは青ざめ、声を詰まらせた。
「何を……とは、おかしなことを。公爵夫人にダンスを申し込んでいたのですが?」
バロック侯爵は気圧されずに切り出した。
「ダンス!?ははっ!ダンスか?こんな虫のような女とダンスが踊れるのか!?」
「ラブグッド公!言葉が過ぎるぞ!女性に失礼ではないかな?」
「はははっ、ああ、そうだな。虫は酷いかな?では、亀とか?どんくさいからぴったりじゃないか?くくっ、自分で言っておいてなんだが、上手いこと言ったな」
エドキエルは悪びれもせず、仰け反って嗤った。
その後ろでは、美しい令嬢達が「まぁ、それは言い過ぎよ」とか「あんまりよね」とか慰めの言葉をかけている。
だが、そんなものは裏を返せば慰めでも何でもない。
優越感に浸っているだけの悪口である。
「噂には聞いていたが、やはりラブグッド公、君はクズのようだ!仕事が出来るだけが救いだな!」
「お褒めいただき光栄だ!人格がどうあれ、誰にも迷惑はかけてないだろう?ん?」
バロック侯爵の言葉に、エドキエルはおどけて返す。
またそれが、嫌味なほどムカついて、とうとう侯爵はエドキエルの胸倉を掴んだ。
だが。
それを止めたのは、ユフィネだった。
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