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「バロック侯爵!!どうか、そこまででお許し下さいませ。私が、私が悪いのです!!」
「公爵夫人!?」
必死で取りすがるユフィネに、バロック侯爵は驚愕した。
あそこまで言われて、なお、腹をたてないのか!?
夫のために我慢するのかと……。
バロック侯爵は、エドキエルを掴む手を下ろし、深く大きく息を吐いた。
そして、眼光鋭くこう言った。
「ラブグッド公爵。君には失望した。だが、献身的な公爵夫人に免じて今日のことは忘れることにする」
「それは助かります。勇猛なバロック侯爵に挑まれると私もただではすみそうにないのでね」
「………減らず口を!」
エドキエルから目を逸らし、バロック侯爵はユフィネを見た。
「どうかお気になされぬよう……とはいっても無理でしょうが。そのお優しい心根が、ラブグッド公に伝われば宜しいのですがね……」
「バロック侯爵………ご迷惑をお掛けしました」
ユフィネは深く長く頭を下げた。
それを見て、周りの心ある男は心底ユフィネを不憫に思った。
やがて、バロック侯爵が去り、ユフィネはエドキエルに向き合った。
言われる言葉(暴言)はわかっている。
「少し優しくされたからって付け上がるなよ?お前みたいな女に誰も本気で同情なんてしない。帰って鏡でも見るといい。どんなに地味で面白くない顔をしているかを!……あ、それより先に鏡が耐えられずに壊れるだろうな」
そう言って、エドキエルは高笑いをした。
会場の婦人達は失笑し、それに堪えられない優しい者達は、言葉少なに場を去ってゆく。
それを虚ろに見ながら、ユフィネは全身が熱く滾るのを感じていた。
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