兄がすくうもの

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兄がすくうもの

 見渡す限り広がる湖。  風もない静かな水面には夜空がそっくりそのまま映っていた。上も下も、満点の星空。空と水面の境がよく分からない。  その水面にすーっと舟がこぎ出された。波紋が広がり、水面の星が揺らぐ。  大きな目で水面を見つめる幼い弟に、兄は「あんまり覗き込むと落ちるぞ」と言いながら櫂で水をかく。  そのとき。  空から何かがきらきら降ってきて、とぷんと湖に沈んだ。 「なあに、あれ」 「馬鹿な星が湖を空と勘違いして落ちてくるんだ」
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