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おまけにおとうがご褒美にブラックバスやニジマスやコイやヤマメやワカサギを芦ノ湖からどっさり獲って来てくれて、それをおかあが料理してくれたので俺はその晩、蔀戸から見える富士の夜景を眺めながら御馳走を肴に村からかっぱらって来た酒を鱈腹飲むことが出来て赤ら顔を真っ赤っ赤に火照らせながら大満足した。
そんな事を繰り返して村に男がいなくなると、村は女の泣き声が方々から聞こえるようになって涙と哀しみにしっぽり包まれてしまった。流石に俺も可哀想になっておかあに持ち掛けると、私も金時と主人がいなくなったら悲しくなるわと同情して女は食べる気になれないから獣で我慢するわと言った。
俺も女を襲うのは気が引けるし女たちが心配になったからおとうに女たちを救ってやれないだろうかと相談すると、おとうはこう言った。
「新たな生き甲斐が生まれるだろうから女たちを女護島に運んでやろう」
それは良いと俺は賛同して村へ行き、女護島は女だけの楽園だみたいなことを吹聴しておいて女護島へ行きたい者は山神様が運んでくださるから山神様のおられる芦ノ湖に来たれと何度も大声で言いながら村を歩き回った。
すると女は大人も子供も挙って芦ノ湖へ行き、おとうによって女護島に運ばれたのだった。何はともあれめでたしめでたし。
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