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鶏鳴暁を告げる時、俺は目が覚める。隣におかあが大きな腹をして鼾をかきながら寝ている。さあ、また人里まで下りて行くか。人間どもにとことん苛められ憤懣を蓄えるためにさ。そうして夜になったら怒りの鉄拳で餓鬼を殴り倒して持ち帰りおかあに生きた儘、食わせるんだ。
俺は村では乞食に成りすますんだ。すると小僧たちは赤ら顔の弱虫のちっちゃい赤鬼めなぞと罵って俺をからかいながら小石なんぞをぶつけて来るんだ。大人の男も何だこの変な乞食はといった感じで白眼視して悪態はついても一銭もくれないんだ。俺が業腹になるのも当然だが、餓鬼が一人減り二人減り日に日に減っていくんで親たちがあちらこちら虱潰しに探し回り、到頭、足柄までやって来るようになった。これでおかあが大人の男も食えるようになる。全く狙い通りだ。おっ、早くもカモのお出ましだ。
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