2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょっと大学に行ってくるから家で待っていてね。お腹すいたらこれを食べていいから」
カップ麺を机に置くと悠馬は家を出た。
この部屋に残ったのは神白ただ一人のみ。
「変な人」
先程のたどたどしい口調は何処にいったのか。誰もいない部屋で神白は呟く。
悠馬という青年は彼女が今まで会ってきた人とは何もかも違っていた。普通見知らぬ少女に食事を与え、そのまま部屋に置いていく。そんな人物は見たこともないし、幾ら何でも唯の考え無しかお人よしに間違いない。
それよりも神白は気になることがあった。
(なんで効かなかったのかな)
目を閉じると彼女は考察する。
普通の人であればこの力は作用すると思っていた。これを彼相手に使い、自分を匿うのを強制させるはずだった。ところがあまり効果が見られない。成功すると確信していただけに神白は少しだけ驚いた。
結局、最後の脅しが効いたおかげで自分はこの家に転がり込むことができたのだが……どうにも彼女は腑に落ちなかった。
「……まあどっちでもいいや」
そう結論付けると神白は目蓋を開け、元の姿勢に体を戻した。終始、彼女はどうでも良かったのだ。
そう――――何もかも。
最初のコメントを投稿しよう!