1章2節 束の間の平穏は、

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 この数日で話を重ねているといくつか彼女について分かったことがある。  まずは年齢だが彼女は15歳と言っていた。平均男性より少しだけ背が低い僕の胴ぐらいしか身長がなかったのでもっと幼いと思っていたのでこの事実に驚いた。  次に学力についても調査した。簡単なテストを受けさせてみたが漢字の読み書きはできていた。それ以外は壊滅的だったけど。  漢字だけ理解している理由は謎だけど読み書きができるのは大きい。  それにチーズトーストが大好物になった。これに関しては此処に来てからだから省略。  だけど一番知りたかったことについては教えてくれなかった。今まで誰と、何処で暮らしていたかだ。  何度聞いてみてもその話になると彼女は口をつぐむ。正直話して貰いたいが……無理矢理聞く訳にはいかない。  思考を止めずにオムライスを食べていく。するといつの間にか完食していたのかスプーンが空を切った。 「……ごちそうさま」  食べ終わった皿をシンクへ持って行く。水と洗剤をスポンジへ含ませるともこもこ泡立っていく。  最初は神白ちゃんの分も持って行ってあげたが少しずつこの部屋に慣れていったのを見計って自分の分は片付けるように教えた。この家で暮らす以上何か仕事をやって貰わないと困る。  それもあって一番最初に教えてあげた。無論、彼女が怪我をしないように一緒にやっている。 「終わった」  皿を洗っている最中に神白ちゃんから食器を渡される。彼女の方が先に食べ終わっていたしこうなるのは毎度のことだ。 「ありがとう。ちょっと待っていてね」 急いで洗剤を流すと彼女から洗い終わった食器を受け取る。乾かす必要があるので適当に並べて置くのを忘れない。 「よし。これで終わり」  片付けが終わったら急いで支度を始めた。この後はバイトがあるし、流石にこの格好で外へは行けない。  今日の夜は冷えるらしい。クローゼットから上着を取り出すとついでに自転車の鍵が入っているのを確認した。うん、ちゃんと入っていた。 「今からバイトに行ってくるから。誰かが来ても返事はしないで鍵を開けないでね!」  一方的に神白ちゃんへ伝えると扉を閉める。スマホを点ければ開始時間が迫っていた。急がないと遅刻する!
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