テニスおじさん🎾河原にて

1/1
前へ
/426ページ
次へ

テニスおじさん🎾河原にて

  初級クラス初日のあの悪夢のレッスンから何日か経った、休日のある日。  私は朝早くからひとり、多摩川の河川敷に立っていた。   川沿いの狭い産業道路を降りてすぐに、草野球のグラウンドがある。  その野球場の低いフェンスの東隣りは大橋の下まで、広い空き地になっている。以前、ここも野球のグランドだったのか、手入れされていない芝生が自生している。  日頃はほとんど人もおらず、橋の欄干の真下で、トランペットを吹く人や、劇団員なのか、大声でセリフを叫び人がいるくらくらいだ。  わたしはこのスペースを自分のテニスコートにしようと思ったのである。( もちろん、その日、その時だけのシンデレラコートだ)  わたしは、Amazonで取り寄せた数々のアイテムが入った、錦織と同じ型のウィルソンの遠征バックを地面に降ろした。  あさ6時なのに、風がなく、暑い日だった。  わたしはまず、キャンプで使うペグを8本取り出し、テニスコートの長方形の短い辺の横を創る。横巾は10.97メートルと決まってるらしい。  シムロンRという巻尺で正確に測りハンマーで決める。 こんどは長辺の縦にペグをハンマーで打つ。  長い方は23.77メートルだ。さすがはイギリスのスポーツだ。企画が細かい。もちろんインチ換算なのだろうが…。    サービスラインの位置も企画通り打つと、8本のペグは完成した。このペグに芝生の緑の補色に当たる、濃い黄色のビニールのひもを通すと、少しテニスコートらしくなった。  仕上げに今回の買い物で1番高かった、テニスネットをセットした。  ビックリするほど本物らしくなった。  ネットは実際のコートの横巾の半分ほどしかないが、まあ仕方ない。約1時間半かかった。やるぞ、何だか分からないが、ファイトが湧いてきた。
/426ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加