テニスおじさん🎾続 河原にて

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テニスおじさん🎾続 河原にて

 仮設コートを見廻し、私は達成感を感じた。だが、これは始まりに過ぎない。  まず、サービスライン(サーバーがサーブを打つ時、超えてはいけない中央のライン)の二歩くらい後ろから球出しの練習をした。  コーチの様に球を自然に落下させそのまま、打つのは、私には意外に難しい。あちこちにボールが飛んで、安定しない。そこで、野球のノックの要領で、軽くトスアップしていち、にい、さんで打つとボールをよく見れて、サービスラインの手前のいい位置にやっと入るようになった。コツをつかむまで、私は人の倍は時間がかかる。  これは仕事でも同じだ。ただし、自分の身体で覚えた事は決して忘れない。     次はコートの半面を使う、ベースライン(サーブを打つ時、踏み超えてはいけないライン)からの長い距離の球出しだ。これには前回の初級デビューで一番苦労した。初球はネットにかけ、2球目はコートを大きくそれた。見かねたペアはその球を拾い、球出しをしてくれた。  わたしは申し訳無さと、恥ずかしさでいっぱいになった。  ベースラインからトスアップし、チャァ、シュウ、メンで打つと、球はまっすぐ飛んで行った。これを何度も繰り返し、身体に覚え込ませる。    最後にクロスでの球出し練習だ。 サーブを打つ要領でデュースコート(自陣のネットに向かって右側のサイド)からクロスの球出し練習をした。  小さいコーンを相手側のサービスラインに二つ置き、これを狙う。  なんとかサービスラインの内側に入るようになった。わたしは週末になると、来る日も来る日も、仮設コートを設置し続けた。  ペグを刺し続けた場所には地面に目印ができ、ビニール紐を渡らせなくてもベースラインが分かるまでになっていた。  わたしは球出しにやっと、自信を持てた。
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