20人が本棚に入れています
本棚に追加
テニスおじさん🎾決戦
いよいよ、秋の社内テニス大会が始まった。
わたしの上司で、ダブルスでペアを組む、ヨウさんとは何回か社内の練習で一緒にプレーをした。
ヨウさんは30代なので動きも早いし、スクールでかなりレベルアップしている。
東大大学院出でスポーツの経験はあまりないらしいのに、めちゃくちゃ負けず嫌いのようだ。
練習の時も、会社内での地位を持ち込まない彼女の態度は、立派だと思った。
今ではヨウさん、マサさんのヨウマサペアだ。
気恥ずかしいという気持ちはテニスを始めた時からすでに、振り捨てて来た。
最初の相手はベテランの混合ダブルスペアだ。特に、男性の方は50代後半くらいで、試合慣れしてるのか落ち着いている。ヨウさんは少し不安そうだ。わたしは「大丈夫、思い切ってやりましょう」と声をかけた。
コイントスに勝ち、ヨウさんはどうすると、私に視線を送って来たので、私は迷わずサーブを選んだ。
この試合前のサーブ練習でわたしは敢えて、速いサーブをガンガン打った。わたしの作戦はここから始まっている。
入る入らないより、こいつは攻めのプレーヤーだと相手側に意識させるためだ。
私はあの河原の仮設コートを思い出していた。
球出しに自信をつけた後、私は来る日も来る日も、サーブ練習を続けた。唯一、自分のペースで打てるショットはサーブだけだからだ。
最初のサーブはマイケルチャンサーブだ。上にトスアップすると見せ、アンダーサーブでネット際に落とすサーブだ。マイケルが最初にやった時、そこまでして、勝ちたいのかと、全世界から批判を浴びた。
初球サーブは相手側のコートのネットギリギリに落ちた。ベテラン男性はぴくりとも動けない。
フィフティーンラブ。わたしは手を上げ、謝りながら声を上げた。
アドサイドからのサーブは相手側女性のフォアハンドにスライスサーブを決めた。サーティーラブ。
三球目のサーブはまたもマイケルチャンサーブ。相手はまたも、動けない。今度は謝る動作はしない。
四球目はバックハンド側に逃げるスライスサーブを決めた。
ゲーム。ここまでは完璧だ。
最初のコメントを投稿しよう!